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帆走速度記録大会     写真と文:山本俊一

absolute sailing speed record trials
photos & text Yamamoto Shunichi




Russell Long & Greg Ketterman on 〈Longshot〉

アメリカ杯は退屈、と風の力だけで
時速90Kmをめざす水上のヒコーキ野郎

帆走によるヨットのあらゆるスピード記録は内湾、外洋を問わずすべて英国
に本部を置くWSSRC(世界帆走スピード記録評議会)によって公認される
ことが必要で、絶対スピード記録を達成しようとする場合、コースは最短でも
500mと規定されている。

帆の面積が小さいほうから10平米以下、クラスA、B、C、無制限の5クラス
(各男女別)に分けられているが、艇の大きさ、重量、デザインなど他の要素
はまったく自由。 実際には10平米以下はセイルボード、それ以上のクラス
は快速を誇る特製のマルチハル(多胴艇)によって占められる。

絶対スピード記録達成に理想的なのは波のない平水、継続した強風、
そしてコースに対して最適な角度で風が吹いていることである。

公認スピード記録を狙う者はWSSRCオブザーバー立ち会いのもとで、
英国のウエイマス、フランスのブレストなどのスピードウイークや、アメリカの
ボデガ・ベイ、カナダのアルバータ、フランスのサン・マリー・デ・ラ・メール、
スペインのタリファなど、どこでも自分のお気に入りの"吹く場所"で"吹く時期"
に挑戦することができる。

アメリカのラッセル・ロングは'90年以来クラスA、B、Cの三つの世界記録
保持者だが、今年のブレストスピードウイーク開幕前日に、初めて訪れた
南仏のサン・マリーで25-35ノットの突風の中、41.89ノット(77.57Km)を
出してクラスAの自己記録を更新した。

彼のトライフォイラー(水中翼三胴艇)〈ロングショット〉は全長4.5m、重量
100Kg以下で、2本の翼状断面マストにセイルボード用のセイルを装備し、
一定のスピードに達すると左右フロートのJの字型水中翼と前部スキー、舵
の逆Tの字型水中翼以外は水面から浮き上がって猛烈にダッシュを始める。
右舷フロート先端のスキーが白いのは南仏のクラスA記録達成時に勢い
あまって岩礁に衝突して修理したものだ。

〈ロングショット〉シリーズはマルチハル好きのデザイナー兼コ・スキッパー
のグレッグ・ケターマンにより'87年以来8艇のプロトタイプが製作され、
一年以内に量産化、市販の計画もあるそうだ。

帆走による絶対スピード記録は長らく'80年に英国のカタマラン(双胴艇)
〈クロスボウII〉が立てた36.00ノットだった(これは無制限クラスとしては未だ
に破られていない)が、'86年にフランスのパスカル・マカが38.86ノットを
出して以来、世界最速の水上帆走体はセイルボードとなった。

現在の最高記録は'91年のサン・マリーでフランスのティエリー・ビエラクが
やはりボードで樹立した44.66ノット(82.70Km)だが、最新情報によれば、
〈ロングショット〉のラッセルがタリファで43.55ノット(80.65Km)を記録した
という。 惜しくもビエラクには届かなかったが、限界に挑むスピードの世界
では"あと1ノット"を稼ぐのがたいへんなのだ。

'80年のアメリカズカップ防衛艇の優秀な艇長であり、元マキシヨット
チャンピオン、デイトナ24hrのカーレーサーでもあった、ラッセルは言う。

「アメリカズカップクラスはたいへん立派なフネだが、依然として遅いままで
私には退屈だ。 私の〈ロングショット〉なら10ノットの風でも27、28ノットは
出してみせる。 水中翼艇はボードよりは有利なはずで、現在の目標は
45ノットの世界の壁を破ることだ。」

ラッセルとグレッグがコンビを組み世界中を荒らしまわりはじめたのは3年前
からだが、彼らのここ2年間の予算は僅かに1250万円。

記録への挑戦が終わり、分解した艇を車に積み込む二人の静かなカリフォル
ニアンに、なんだか草創期のヒコーキ野郎を連想してしまったのは、ドライ
スーツに防水眼鏡という彼らのいでたちのせいばかりではなかったようだ。

( 写真 )
クラスAで43.55ノットを達成したアメリカ人、ラッセル・ロングの〈ロングショット〉


Russell Long/trifoiler Longshot

Sports Graphic Number (Japan)          September 20, 1992 

Speed guys trying for 90km sailing 
Russell Long/trifoiler Longshot
photo & text Yamamoto Shunichi 







Base de Vitesse Brest


帆走スピード記録大会は何でもありのバトルロイヤル

「アメリカズカップはあいかわらず遅いままで私には退屈だ。 私の水中翼
三胴艇〈ロングショット〉なら10ノットの風でも27,8ノットは出してみせる。
セイルボードよりスピードは出るはずで、今の目標は45ノットの世界の壁
を破ることだ。」

フランスのブレストスピードウイークで語るのは、'80年にはアメリカズカップ
防衛艇の優秀なスキッパーであり、元マキシヨットチャンピオン、デイトナ24h
のカーレーサーでもあったアメリカのラッセル・ロング。

帆走スピード記録は英国のWSSRC(世界帆走スピード記録評議会)が認定
し、コースは最短500m。 セイル面積により10平米以下、クラスA、B、C、
オープン(各男女別)の5クラスに分けられているが、現在世界最速の水上
帆走体は10平米以下に入るセイルボードの44.66ノット。

ラッセルはクラスA、B、Cの3つの世界記録保持者だが、3月16日に南仏で
41.89ノット(77.57Km)のクラスA自己記録更新の翌日ブレスト入りして大会
の雰囲気は一躍盛り上がった。

ブレスト市主催のスピードウイークは、数少ない帆走スピード記録大会だが
今年で早くも12回目。 多くのセイルボードや、スピードに勝る特別製の多胴
ヨットが参加する。

セイル面積以外はまったく自由なため、オープンクラスでフランス新記録31.81
ノットを出した全長23mの高価ハイテクカタマランもあれば、パラグライダーで
引っ張るフネあり、 エキセントリックすぎるとの下馬評ながら、おじさんたちが
自費で9つも模型を作り8年もかけて製作した4枚のウイングセイルの凝った
艇もあった。

記録も、予算も、艇のデザインも、参加者たちもピンからキリまで実にさまざま
だったが、たったひとつ彼らに共通していたのはだれもがマジに挑戦していた
ことだった。

各クラスの上位記録者には"至高の銀杯"ではなく、最終日に多数のカップが、
それに"小切手"は毎日授与されたことも付け加えておく。

( 写真 1 )
スピード基地ブレストで浮き上がって快走する〈Longshot〉

( 写真 2 )
これでもアマチュア製作のフネ


Base de Vitesse de Brest

Playboy (Japan)          July 1992 

Battle royal at Base de Vitesse de Brest 
photos & text Yamamoto Shunichi 







Semaine Internationale de Vitesse a la Voile de Brest


第12回ブレストスピードウイーク
フランススピード3人衆、50ktへのエリアに挑戦!

フランスは、ブルターニュ西端の港町ブレストで毎年開催されるスピード
ウイークは、英国のウエイマスと並ぶ数少ないセイリングによるスピード記録
大会だ。 コースは、WSSRC(世界帆走速度記録評議会)の基準にもとづく
500mで、その時の最適のウインドアングルに応じて角度が指定される。

英国に本部を置くWSSRCでは、公認スピード記録をセイル面積によって10
平米以下、クラスA、B、C、無制限のクラスオープン(各男女別)と5クラスに
分けているが、実際には10平米以下はセイルボード、それ以上はスピード
に優る特製のマルチハルヨットばかり。

3月14日から22日の期間中、最後の2日間は25-30ktの風が吹いたものの、
どのクラスも世界新は出ず、オープンクラスで23mカタマランがフランス新
記録31.81ktを出したにとどまったが、クラスA、B、Cの世界記録保持者、
アメリカのラッセル・ロングがトライフォイラー〈ロングショット〉に乗り、南仏で
41.89ktというクラスAの自己記録更新をした翌日にブレスト入りして、一気に
ボルテージは上がった。

今年からPBAの賛助イベントとなった10平米以下クラスには、6ヶ国から69人
が参加したが、優勝は男性が地元ブレストの18歳の大男の30.59kt、女性
がレコードホルダーのコケルの26.78ktだった。

ところでボードセイラーが一番多い国はどこか知ってますか? PBAの'91年
10月の調査によれば、全世界824万5千人のうち、日本は30万人で、トップは
日本の半分の人口しかないにもかかわらずフランスの225万人なんだそうだ。
そして、やはり、男女ともに10平米以下クラスの世界記録もPBAの'91年
スピードチャンピオンも冒険野郎の多いフランス人。

マカもビエラクも50ktはすぐにでも可能だと言う。 ビエラクが'91年4月18日、
南仏のサン・マリー・デ・ラ・メールで44.66ktを出した時は、風速45ktで最大
突風50ktが吹き、ウインドアングルは115度。 7Kgのウエイトベストを着け、
全長260cm、最大巾35cm、フィン長19cmの特製スピードガンと4.3平米
のセイルを操った。

188cm、102Kgのいつも陽気な大男、ビエラクは言う。 「条件は三つあって、
強風、平水、そして良好なウインドアングル。 ベストは130度。 50ktバリア
を破るのは、セネガル・ベルデ岬かスペイン・タリファかフランスのサン・マリー・
デ・ラ・メールだろうね。」

PBAワールドツアーの中でも、スピードの大会は数少なく、マカ、ビエラク、
コケルの三人とも賞金ランキングの上位には顔を出していないが、'86年の
マカ等以来最速のセイルクラフトとなったセイルボードを操り、セイリングに
よる絶対スピードを追求する彼らは、いわば相対的な勝ち負けよりも、不滅
の記録、未知への挑戦により魅力を感じているのだろう。

( 写真 1 )
レース中は怒鳴りも辞さない男勝りのバベス・コケルは素顔はちょっぴり
照れ屋のお姐さん。 '86年からスピードを始め、'91年7月12日にスペイン
南端のタリファで10平米以下クラス女性世界新記録39.70ktを出し、
'90、'91年PBA女性スピードチャンプ。

( 写真 2 )
現在世界最速の男、気のいい大熊ティエリー・ビエラクは馬鹿な注文にも
気軽に乗ってくれる。 彼のボードは3本のスピードと2本のスラローム。
スピード三人衆はみんな30代なのだ。

( 写真 3 )
片言の日本語を操る物静かな仙人、パスカル・マカはプロサーキットの
10年選手。 10平米以下クラス'82、'86、'90年世界記録保持者。 '89、
'91年PBAスピードチャンプでもあり、自分のスクールも開いている。


Thierry Bielak/Babethe Coquelle/Pascal Maka

Hi-Wind (Japan)          June 1992 

Three French speed crazy boardsailors 
Thierry Bielak/Babethe Coquelle/Pascal Maka
photos & text Yamamoto Shunichi 






ISAF/WSSRC Current World Records, 500 Metre Course

kite board Alexandre Caizergues   Fra kite board 56.62 kts 2013 Port St Louis
kite board women   Charlotte Consorti   Fra kite board 50.43 kts 2010 Luderitz
10 sq m Antoine Albeau Fra    windsurfer 52.05 kts    2012   Luderitz
10 sq m women    Zara Davis Gbr windsurfer 45.83 kts 2012 Luderitz
A class Russell Long Usa Longshot 43.55 kts 1992 Tarifa
A class women Allison Shreeve Aus windsurfer 27.70 kts 2005  Saintes Maries
B class Paul Larsen Aus Vestas Sailrocket 2 65.45 kts 2012 Walvis Bay
C class Simon Mckeon Aus Macquarie Innovation 50.07 kts 2009 Sandy Point
C class women Jean Daddo Aus Yellow Pages Endeavour   17.38 kts 1993 Sandy Point
D class Alain Thebault Fra Hydroptere 51.36 kts 2009 Hyeres
outright Paul Larsen Aus Vestas Sailrocket 2 65.45 kts 2012 Walvis Bay
outright women Charlotte Consorti Fra kite board 50.43 kts 2010 Luderitz



10 sq m class       up to and including 10.00 sq m
        A class up to and including 13.93 sq m ( 150 sq ft )
        B class up to and including 21.84 sq m ( 235 sq ft )
        C class up to and including 27.88 sq m ( 300 sq ft )
        D class                    over 27.88 sq m ( 300 sq ft )


 ( WSSRC - World Sailing Speed Record Council )
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